新型コロナウイルス感染症が発生してから、私たちを生かしてくれる地球と自然を想うとともに、癒しを与えてくれるアーティストたちに感謝する経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。今回は、シカゴをベースに国際的に幅広い音楽活動を繰り広げるバイオリニストの田辺恵美さんを紹介させて頂きます。
田辺さんは、オハイオ州クリーブランドを拠点とするグラミー賞を受賞したバロック・オーケストラApollo’s Fireのメンバーであり、アメリカ、イギリス、スペイン、フランスなどでコンサートやフェスティバルに出演しています。音楽の殿堂と言われるニューヨークのカーネギーホールやイギリス発世界最大級のクラシック音楽祭BBC Promsでも演奏した経験があります。
東京で生まれ育った田辺さんは、中学生の頃マイケル・ジャクソンが出演した映画を観て、アメリカの「キング・オブ・ポップ」の歌や踊りに衝撃を受けました。その後、東京ドームで開催されたマイケルのコンサートを2回観ました。「今でもあのコンサートよりも素晴らしいライブ・エンターテインメントは存在しないのでは」と当時を思い出すそうです。アメリカ留学を決意したのも、マイケルの歌やラジオインタビューを聴いて、英語を学びたいとの思いが強まったからです。渡米後は北テキサス大学、イーストマン音楽院、そしてシカゴのパーフォーミング・アート大学でクラシック音楽を学びました。
大学でクラシック音楽を勉強するとオーケストラに入るか、音楽を教えるか、という2つの選択肢しかありません。卒業後は楽器屋さんで働きながら生計を立てました。約10年前に「音楽活動一筋で生きたい」と、思い切って仕事を辞め演奏に専念しました。本当に大きな「賭け」でしたが、幸いにもThe Cover Girls Violin Showというポップ・ロックのグループに出会い、メンバーとして演奏するようになりました。様々なジャンルの音楽をバイオリンで演奏するのが楽しく、「ビリー・ジーン」など大好きなマイケル・ジャクソンの名曲や、ロックバンドMaroon 5の曲もバイオリンで弾くようになりました。
演奏を続けるうちにネットワークが広がり、2019年2月に所属バンドCover Girlsは、伝説のロックバンドChicagoのゲストアーティストとしてラスベガスのベネチアンリゾートで11回公演することになりました。中西部でもミルウォーキー・サマーフェストやラビニア音楽祭で2回公演しました。田辺さんは共演したChicagoのメンバーに大きな感銘を受けたそうです。「60~70年代の音楽家たちはクラシックやジャズを勉強しているので非常に洗礼されています。Chicagoは10億万以上のレコードを売っているバンドですが、メンバーの皆さんは謙虚で、同じプログラムでも毎回良くしようと努力する姿勢にインスピレーションを受け、とても良い人生勉強になりました」。
様々なジャンルのミュージシャンと共演して音楽一筋で生きていく人生を選んだ田辺さんですが、音楽を介して様々な人たちと出会い、言語が異なっても演奏によって「心が通じコミュニケーションがとれる」ことに喜びを感じています。ソロ・バイオリニストとしての活躍に加え、クラシック、タンゴ、フラメンコ、ラテン、ケルト、ジャズ、子供向け音楽など多様なジャンルで、タイプの異なるミュージシャンと全米でコラボしています。
今後の夢は、グラミー賞を取ること。もう1つは病気に苦しむ人を救うことです。「人を癒せるような音楽グループをつくりたい」という田辺さん。カーネギーホールの舞台に立った瞬間や、Chicagoと共演したときは最高に幸せ!と思いましたが、老人ホームで演奏する機会を持ったことも大切な宝物です。演奏を聴いてくださる高齢者の笑顔をみるのが「音楽をやっていて本当に良かった」と思える至福の瞬間だそうです。
「癒しの音楽」は、これからの時代がますます必要とするものではないでしょうか。ダイナミックで優しい音楽を発信する田辺さんの今後のご活躍を期待致します。
田辺恵美さんFacebookページ
www.facebook.com/emi.tanabe.73