夏の終わりを告げると言われる「Labor Day」はもうすぐです。冬が来る前に野外で楽しく過ごせるアクティビティをお探しの方も多いのではないでしょうか。今回はシカゴ市南部のシカゴ大学キャンパスに隣接し、1世紀以上にわたって日本文化の発信スポットになっている歴史的なジャクソンパークをご紹介します。
ジャクソンパークは1893年(明治26年)にシカゴ市で開催された「世界コロンビア万博(シカゴ万博)」の会場でした。世界中の展示物を集めた同万博の中心的な存在として、日本政府は京都の宇治にある「平等院鳳凰堂」を模した木造の建物「Phoenix Pavilion(鳳凰殿)」を建築しました。文明国としての日本の地位を世界にアピールするため、豊かな芸術遺産や伝統を取り入れ、日本文化の質の高さを示した建物でした。
シカゴ万博の終了後、日本政府は鳳凰殿をシカゴ市に寄贈しました。1930年代には、シカゴ公園局が鳳凰殿を修復し、美しい桜の木を植樹した日本庭園を築き、花見を楽しむ人びとでにぎわう公園へと活性化しました。 残念なことに第2次世界大戦が終わってから1年も経たない1946年、鳳凰殿は放火によって焼け落ちました。
1973年、シカゴ市と大阪市が姉妹都市提携を結び、日本庭園の修復事業が実施されました。 1993年には、シカゴ・大阪姉妹都市提携20周年を記念して、同庭園は「大阪ガーデン」と改名されました。ジャクソンパークを含めた周辺地域の再開発が計画される中,日米の友好関係の貴重なシンボルである同庭園は現在「The Garden of the Phoenix(鳳凰の庭園)」とも呼ばれています。
この再開発事業に貢献されたのはアーティストとして活躍するオノ・ヨーコさんです。故ジョン・レノン氏の未亡人で、世界平和・人権運動家としても知られるオノさんは2013年に、シカゴ万博120周年記念に桜が植樹された公園をみて、鳳凰殿が焼け落ちた跡地を癒したいと思われたそうです。3年後の2016年には、オノさんが北米で初めて手がけたパブリックアート「スカイランディング(SKYLANDING)」がジャクソンパークに寄贈されました。
スカイランディングには世界平和へのメッセージが込められており、シカゴ市が力を入れる公共アート・プロジェクトの一環でもありました。同作品は、蓮の花をモチーフに、空に届くようなイメージで構成されています。
消失した「鳳凰殿」の跡地に「スカイランディング」が設置され、ジャクソンパークは現在も日本文化の発信地、また人々の憩いの場として愛され、観光スポットとしても将来が期待されています。多くの方々がこの歴史的な公園を訪れ、日本庭園と癒やしの彫刻「スカイランディング」をご覧になれる機会があることを願っております。秋の一日を、日米関係の歴史に思いをはせながら庭園を散策されてはいかがでしょうか。
関連サイト
https://www.chicagoparkdistrict.com/parks-facilities/japanese-garden
https://news.wttw.com/2016/10/20/new-sculpture-yoko-ono-seeks-give-peace-chance