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TSUNAGU:つなぐー日米の架け橋として活躍する人物を探る
Activ8インタビュー・シリーズ

「TSUNAGU(つなぐ)とは“結ぶ”こと。働き手を探す人と仕事を探す人を結ぶ、異文化を結ぶ― かたちは違えど、私たちActiv8はより良き世界の実現のため「架け橋」となり日夜努力している方々に、心からの敬意を表します。Activ8の新しいシリーズ「TSUNAGU」は、ビジネス、教育、芸術、文化などを通じて日本とアメリカをつなぐ、インスピレーションあふれる人々を特集します。

第3回 ジュリア百瀬さん:熟練バーテンダー、ジャパニーズ・ダイニング&バー“Kumiko” 経営者

Photo: ©Sammy Faze Photography

アメリカ国内でその名をとどろかせるシカゴのダイニング&バー「Kumiko」のバーテンダーで、クリエイティブ・ディレクター、そして共同創業者でもあるジュリア百瀬さんは、食やドリンクの味をクリエイトすることで日本とアメリカをつないでいます。

百瀬さんの類まれなる専門知識は、ニューヨークを皮切りにバルチモア、そして現在彼女が活躍するシカゴにいたるまでの長年にわたるバーテンダー歴やバー・コンサルティングをはじめ、さまざまなレストランにおけるカクテルメニュー開発といった経験を通して培われ、開花したものでした。

日本文化への情熱を胸に抱き続けながらきめ細やかなバーテンダー業、接客業、そして高級レストランで豊富な経験を積み上げた百瀬さんは、2018年に日本の味と伝統の粋を極めたカクテルメニューを提供するジャパニーズ・ダイニング&バー「Kumiko」を設立しました。

母のおもてなしの温かさや気品が、私の中にいつも染みついています。

日系アメリカ人の父とアメリカ人の母の間に生まれた百瀬さんは、奈良で育ち、そこで若くしてサービス業への興味を持ったそうです。幼い頃、母親が自宅を訪れるお客様におもてなしをする気品あふれた様子にすっかり心を奪われ、10代の頃から小さなレストランやカフェでのアルバイトを通して接客業の経験を積んだ後、高校を卒業後には一念発起して日本を離れ、ニューヨーク州イサカ市のコーネル大学に進みました。

その後、成人になった百瀬さんは日本を訪問し、生まれて初めて訪れたバーで、彼女の人生を変えるある感動的な経験をします。それは京都の歴史的な祇園界隈にあるエレガントで古めかしいピアノバーでのことでした。彼女は、自分の注文したジンマティーニをつくってくれる日本人バーテンダーの一挙手一投足に目を奪われたそうです。

そのお店は、誰もがすごくエレガントな装いをしていて、すごく優雅でした。そんな中、そのバーテンダーは白いジャケットとベストをキッチリと着こなし、飲み物を作るたびに氷を球状に削っていたのです。

お客一人ひとりの飲み物に氷を美しく球状に削って丁寧に提供するバーテンダーの、その流れるような、細部にまで神経の行き届いた職人技に、百瀬さんは畏敬の念を抱いたといいます。

「見ているだけでうっとりとしてしまいました。あまりにゴージャスな経験だったので『私もいつかこの気持ちをお返ししたい、お客さまに提供できるようになりたい』と思ったのです」。

それが、彼女の中に芸術的な日本のバーテンダー技術に対する情熱が芽生えた瞬間でした。その“人生を変える瞬間”ののち、バーテンダーの道を進み始めた百瀬さんはそれから、その歩みを止めることはありませんでした。

私のお店の常連客の多くはシェフでした。私のつくったカクテルを飲んだ彼らは私にこう言いました。『シカゴへ行くべきだ!君はもっと大きな都市に行って、もっと多くのことをやるべきだよ』と。

熱い決意とともにアメリカに戻った百瀬さんは、まずはバーの裏方として経験を積むためにカクテルウェイトレス、バーバック(バーテンダーのアシスタント)、そしてついに、当初は女性のバーテンダーを許さなかったそのお店の初めての女性バーテンダーとしてフルタイム職を得るにいたりました。

モモセさんは2012年までバルチモア州でキャリアを積み、当地の高級レストランなどでもバーテンダーとして働きながら、並外れたミクソロジー(カクテル術)の専門知識を開花させていきます。レストランの新メニュー用のオリジナルカクテル製作に着手したほか、バープログラム全体をゼロから開発したりもしたそうです。

そんな折、常連客から繰り返しシカゴの素晴らしい食とカクテルのシーンについて聞いていた百瀬さんは、次なるステップの土地としてシカゴを選ぶことにしました。そして、2013年にシカゴに移り住み、たちまちこの街と恋に落ちてしまったのです。

「Kumiko(組子)」とは“工芸技術”

Photo: ©Sammy Faze Photography

導かれるようにシカゴに移り住んだ百瀬さんは、自分のバーを開店するという夢を実現に移すことにしました。自分のバーの名前を決めるにあたって心に留めていたのがある日本の伝統的な木工技術でした。その伝統技術は“組子”と呼ばれ、木片を巧みに切って組み合わせることにより様々なデザインを作り出すもの。釘や金物を一切使わず、卓越した職人の専門技術や精巧性によってのみ模様が生み出されます。百瀬さんは、この組子が作られるまでのプロセスに敬意を表し、さらに日本人のホスピタリティーやバーテンディングの手法へお客様をいざなう想いから、バーの名前を“Kumiko”と名付けました。

「私は、日本のバーテンディング技術の美しさや卓越した職人技を前面に押し出したバーをクリエイトしようと考えました。「Kumiko」は、人々が集って私の故郷の一部を体験でき、私に幸せをもたらす、そんな場所なのです」。

「Kumiko」をオープンする過程で、店の建設、店舗のデザイン、開店費用、スタッフの採用、情報発信、そして究極は、シカゴの真冬に店をオープンすることなど、多くのトラブルに直面。しかし、これらの困難にもかかわらず、夫、両親、友人、パートナー、投資家からの素晴らしいサポートに助けられ、同時に刺激や勇気をもらった事を百瀬さんは楽しそうに振り返ります。

2018年12月31日の大晦日に、シカゴのウェスト・ループ地区に「Kumiko」を開店し、エレガントで魅力的な日本のカクテルとお食事でお客様を迎え始めました。爽やかな味を作り出すために焼酎や日本酒、ほうじ茶などの日本の飲み物をブレンドしながら、伝統的な日本流ミクソロジーの優雅な手法であらゆる“Kumikoカクテル”(伝統的なカクテル、“スピリットフリー(ノンアルコール)”)を提供しています。

Photo: ©Sammy Faze Photography

日本の文化を共有する

「食べ物やドリンクをご提供することは、一体感を感じたり文化を自然に共有したりする瞬間をつくり出すことでもあるのです」と百瀬さん。「おひとりでお見えになったお客様が、同じように初めて日本酒や焼酎を召し上がっているお隣のお客様と意気投合するのを目の当たりにすることがあります。私はKumikoが作り出すそんな絆や友情を目にする瞬間がとても好きなのです」。

オープンから1年も経たないうちに「Kumiko」が提供する日本文化の美しくも芸術的な体験は国内で人気を博し、賞賛を浴びることとなりました。2019年、タイム・マガジンは“世界の最も素晴らしい場所”トップ100に「Kumiko」を挙げ、新型コロナ禍での様々な困難があったにも関わらず彼女はそれらを乗り越え、シカゴ内外から訪れるお客さまに日本文化の美を共有し続けています。

そんな百瀬さんは、「Kumiko」の芸術的なドリンクを通して日本とアメリカをつなぐだけでなく、日本のミクソロジーやバーテン術の技能や技術にも光をあてた『The Way of Cocktail(カクテルの道)』(2021年10月12日出版予定)を書き上げました。それは彼女があの京都のバーで心に秘めた『私もいつかこの気持ちをお返ししたい』という気持ちを伝える手段なのかも知れません。

「あきらめないで」

自分のキャリア目標を達成することについて百瀬さんが強調するのは、自分のビジョンを言葉にして口に出すこと、そして自分を支えてくれる人たちとそれら共有することの重要性です。

Photo: ©Sammy Faze Photography

「あなたの夢を明確にしてください。それらを口に出して言ってみてください。そして世の中に発信してください。その気持ちやニーズをサポートシステムに伝えることで、夢を持ち続ける喜びが生まれるのです」。

「そして、目的を達成する、そのプロセスを尊んでください。決して到達を焦らず、他の人たちと作り上げた全ての瞬間やかかわりを受け入れてください。あなたが目標を達成した時、振り返るとそこには美しい物語があり、次の目標への道が目前に広がっているでしょう」。

◆Kumiko
Address: 630 W Lake St, Chicago, IL 60661
Phone: (312) 285-2912 | Website: barkumiko.com

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