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「TSUNAGU(つなぐ)」とは“結ぶ”こと。働き手を探す人と仕事を探す人を結ぶ、異文化を結ぶ― かたちは違えど、私たちActiv8はより良き世界の実現のため「架け橋」となり日夜努力している方々に、心からの敬意を表します。Activ8の新しいシリーズ「TSUNAGU」は、ビジネス、教育、芸術、文化などを通じて日本と北米をつなぐ、インスピレーションあふれる人々を特集します。

第28回、谷津田友里さん:フラワービジネスオーナー、フローリスト、イベントコーディネーター

今回は、シカゴでフラワービジネスを起業し、同時に日系コミュニティでイベントコーディネーターとして活躍する谷津田友里さんをご紹介します。友里さんは、子育ての合間を縫って積極的に活動の幅を広げ、人々を笑顔にする様々な場を社会に創り上げてきました。友里さんの主な活動について、そしてその活動を支える想いについてお聞きました。

お花の世界に導かれ

友里さんは東京に生まれ、自営業の家庭に育ちました。幼少期は体がとても弱く、小学校の体育の授業はいつも見学。「みんなのように自由にスポーツをしたり動き回りたいな」と小さな心を痛めていました。後に大きな手術を経て病気が完治すると、冬の間じっと寒さに耐えていた草花が春の到来と共に一斉に芽吹き始めるように、友里さんの世界も一気に広がりを見せていきます。これまで我慢していたスポーツも思いっきり楽しめるようになると性格も活発になり、中学の時にはバスケットボール部のキャプテンになるまでに。また家ではお菓子作りやクラフト、手芸などを積極的に楽しみました。母親が池坊の生け花を習っていたためお花が身近にある生活でしたが、本格的にお花に関わるようになったのは社会人になってから。オランダの航空会社の客室乗務員として勤めていた時、お客様や同僚から日本文化について尋ねられることが度々あり、日本文化を意外と知らない自分に気が付いたのです。「海外の方に日本の文化を正しく伝えられるようになりたい!」という思いから、生け花、茶道、着付けなどを習うようになりました。「オランダ」といえばその国花であるチューリップが有名ですが、実はチューリップだけでなく、世界中から多種多様な花が集まる“世界一大きい花市場“があるそうです。友里さんは仕事でオランダに行く機会が増えると、一層花との関わりが増えていきます。趣味で始めた生け花も本腰を入れて取り組むようになり、やがてお免状を取得しました。同時に、枯れずにずっと長持ちする魔法のようなお花“プリザーブドフラワー”にも興味が出てきて、そのクラスにも通いました。さらには自身の結婚を機にブーケ専門の学校にも通い、自分の結婚式だけでなく、友人の結婚式の時にもブーケやブートニアを作ってプレゼントし、大変喜ばれました。その時の感激はひとしおで、その経験を通して「好きなことを仕事にできたら」と意識するようになりました。

結婚でアメリカに移住してからも花への情熱は高まる一方。しかし子育てが始まると、一つの問題に直面します。それは、生花を扱うことが難しいという状況でした。生花は品質管理のために定期的な水やり、適切な光量や温度調整などこまめな手入れが必要。この先何年も続く子育ての期間中、どのようにお花と関わり続けることができるか模索する中、生花の長期保存が可能なプリザーブドフラワーを本格的に学ぶことを決意。自宅で教室を開くことを夢見て、育児の合間を縫って勉強を続け、資格を取得します。念願が叶い、2014年より自宅でプリザーブドフラワーやブーケ作りなどの教室を始めました。時には小さい子供を背中におぶいながらの活動でしたが、徐々に評判が広がり、プライベートパーティで教えるなど、外での活動も増えていきました。

逆境をバネに〜会社設立へ

正式に起業するきっかけとなったのは新型コロナウィルスによるパンデミックでした。呼吸器専門の医師であるパートナーは最前線で重症患者と向き合う日々。「彼の身にもいつ何が起こるか分からない」という大きな不安の中、「幼い子供達のためにも、いざという時のために経済的に自立できるようになりたい」という思いが強く湧き上がります。育児で多忙極まる中ではありましたがスピード感を持って準備を重ね、ロックダウンという逆境にも負けず、2020年10月、オンラインショップ「De Bloemen (デ・ブルーメン) Flower Design」を設立。この名称はオランダ語で「花」を意味し、オランダが友里さんにとっていかに大切な思い出の地であるかが伺えます。ウェブサイトやEtsyなどを通して四季折々の生花やドライフラワーなどを生かしたブーケやリースを販売することから始めました。友里さんの手技と真心が織り成す作品は、優しさに満ち溢れ、空間を柔らかく彩り、人々の心に癒しや喜びをもたらしてくれます。

人と人とのつながりが分断され、社会に恐怖と不安が渦巻いたコロナ禍、友里さんから届くお花の贈り物にどれだけ多くの人が心癒され笑顔を取り戻せたことでしょう。友里さんは作品に込める気持ちについて、こう語ります。「私のお届けするお花の贈り物が、人々の大切な思い出や、贈る人と受け取る人の気持ちをつなぐ役割を果たしてくれたらと願っています。出産・結婚・卒業などの晴れの舞台のギフトを作ったり、お悔みやお見舞いのお花を作ったり、お花を通して様々な方々の想いを表現させていただいています。こうして多くの方々の人生の節目に少しでも関われることに感謝しています。」

コロナ禍が落ち着いてくると、対面での活動も再開し、クリスマスリース作りや門松作りなど季節や行事に合わせたワークショップを開催。参加者が楽しくお花に触れられる機会を提供しています。また、ファーマーズマーケットで出店したり、近所のプラントショップとコラボして期間限定で作品を販売したりと、コミュニティでの活動も増やしていきました。口コミやSNSを通して、評判が評判を呼び、自宅のアトリエだけでなく会社の大きなイベントなどにも呼ばれるようになり、活動の幅は大きく広がっています。

イベントコーディネーターとして

友里さんのもう一つの大きな活動は、JASC(Japanese American Service Committee:シカゴ定住者会)での役割です。JASCは1946年に設立されたシカゴに住む日系人のための団体で、日本語や日本文化・伝統の継承、日系人の歴史や遺産の保存・継承、社会福祉サービスの提供などを担っています。

日本語プログラムに関しては、1983年に発足した未就学児対象の「たんぽぽ会」に加え、2017年には小学生から中学生までを対象とした「どんぐり会」がスタート。たった1クラスからのスタートだった「どんぐりの会」は、今では先生が7名、生徒数40名を超えるまでに成長しています。友里さんは2019年より「どんぐり会」の日本語の先生として活動に加わり、また同時にJASCのイベントの運営も任されてきました。そうして多くのファミリーと交流する中で、「もっとこういう機会があったら・・・」という要望が次々と耳に入ってくるようになります。

“JASCという場を通して、もっと多くの人々に喜んでいただけるサービスを増やしていけるのでは・・・”とそのポテンシャルに気付いた友里さんは早速、JASCのリーダーに掛け合います。そうして、2024年秋より、キッズプログラムの「イベントコーディネーター」というポジションに就任し、みんなの要望を一つ一つ形にして行くための活動に日々邁進しています。その一つの例が、毎月開催される料理クラス。四季折々の本格的な伝統料理を体験できる教室は大好評ですぐに予約がいっぱいになってしまうそうです。その他にも、毎年恒例のディキャンプに加え、先日は親子で一緒に参加できるお味噌づくりのイベントもあったそう。現在のキッズプログラムはこれまで以上に充実しています。

「無いのなら作る」〜人を喜ばせ、咲かせる場を〜 

周囲のニーズをキャッチし「無いのなら作ろう」と新しい機会を生み出すーそんな友里さんのパイオニア精神と行動力は、仕事の面だけでなく、ボランティアでも果敢に発揮されてきました。その一つとして「日本語での読み聞かせ活動」があります。元々は、子供が小さい時に「読み聞かせをしてあげたい」と、数人のママさん達と始めた活動でしたが、彼らが駐在期間を終えて次々に帰国してしまうと、“日本語と日本の文化を継承できるこの意義ある場をどうしたら継続していけるだろうか”と一つの壁にぶつかります。考えを重ねた結果、「シカゴ領事館のスペースをお借りして、地域に開かれたオープンなサークルにしていけば、もっと多くのご家族が繋がれる場所になるのでは」と思い立ち、友里さんは早速、シカゴ領事館に掛け合います。そして2014年、晴れて「シカゴ読み聞かせの会」はスタート。友里さんの蒔いたこの一粒の種は、十余年経つ現在でも成長を続け、毎月一回、継続的に開催されています。国際結婚や駐在でシカゴに住むファミリーの子供達そして、異国の地で育児に奮闘するママ達にも大きな喜びをもたらしています。

新しいことを始めるには、勇気もエネルギーも必要です。友里さんの多岐に渡る活動の根底にある想いについて質問すると、提供するサービスによって人を喜ばせたい気持ちと共に、“人を咲かせたい”という願いを語ってくれました。「地域でも子供の学校でも、色々な才能のある方々と出会うことができました。そういう方々が輝けて更にステップアップできる場所があったら。」その願いの通り、友里さんの活動を通して、例えばJASCの様々なイベントでは専門の講師の方々が文化を教え、読み聞かせの場はこれまでたくさんのボランティアの方々が活躍する機会となりました。自身の成長だけでなく、人とのつながりを大切にし、人を「咲かせて」いく。それは、まるで友里さんのお花の作品のよう。一本一本の草花の個性的な美しさを活かしながら一つの作品を形作るように、多くの素晴らしい個性を持った方々が集まり、一つの目的に向かって共に輝ける機会を友里さんは創っているのです。

ワーク・ライフバランスの大切さ

これからキャリアを構築する方々へのアドバイスを伺うと、友里さんは『ワーク・ライフバランスの重要性』について話してくれました。育児の真っ最中に立ち上げたビジネス、JASCでの仕事、そして、地域や学校での様々なボランティア活動など、多岐に渡る社会的責任を抱えながら走り続けてきた友里さん。これまでは「やってみたい、関わりたい、助けたい」という気持ちから、頼まれたことはNOと言わずに色々と引き受けてきたと言います。しかしその前向きな気持ちとは裏腹に、時間も体力も追いつかず体調を崩してしまったこともあったそうです。そこで学んだことは、あくまでも“ライフの中にワークがある”ということ。「優先順位をつけながら、自分にできることを考え工夫していかないといけない」と痛感したそうです。

この『ワーク・ライフバランス』は特に女性のキャリアデザインにおいて重要なテーマです。女性は往々にして、結婚・出産・育児などのライフイベントにより、やむ無くキャリアが中断されてしまうことがあるでしょう。しかし、キャリアをあきらめるのでも、反対に家庭を犠牲にするのでもなく、柔軟に新しい可能性を探り続けていくことができれば、仕事とプライベートの両立も可能になって行くことでしょう。

友里さんは子育てについてこう語ります。「子どもの成長に合わせて色々な機会に関わることができ、様々な方々との出会いがあり、自身の可能性を広げてくれました。」ライフステージの変化をポジティブに捉え、ある時は準備期間に当て、ある時はオンラインで前進するーそうやって柔軟でしなやかに前進し続ける友里さんの姿は、まさに「ワーク・ライフバランス」を上手に実践しているロールモデルと言えるのではないでしょうか。

今後の展望について

今後の展望について尋ねると「このアメリカの地で“自分にしかできない事ってなんだろう”と最近よく考えます。『自分に興味があってやりたい事』『自分ができる事や活かせる事』『人々が求めているもの、社会的に意義ある事』その3つが合わさるところにもっとフォーカスしていきたいと思います。将来的には、プリザーブドフラワーで作る『和』のアレンジメントのラインアップを立ち上げていけたら・・・。またJASCでは、イベントの企画運営を通して、より多くの方に日本の素晴しさを知っていただき、アメリカと日本を橋渡しできるような存在になりたいです。」 と構想を教えてくれました。

様々な活動を通して喜びの輪を広げ、たくさんの人々に笑顔をもたらしてきた友里さん。今後の更なる活躍を応援しています。

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