TSUNAGU:つなぐー日米の架け橋として活躍する人物を探る
Activ8インタビュー・シリーズ
「TSUNAGU(つなぐ)とは“結ぶ”こと。働き手を探す人と仕事を探す人を結ぶ、異文化を結ぶ― かたちは違えど、私たちActiv8はより良き世界の実現のため「架け橋」となり日夜努力している方々に、心からの敬意を表します。Activ8の新しいシリーズ「TSUNAGU」は、ビジネス、教育、芸術、文化などを通じて日本とアメリカをつなぐ、インスピレーションあふれる人々を特集します。
第1回 トニー入谷(Tony Iritani)氏:「JABA Las Vegas Inc.」代表
ラスベガスでツアー会社「JABA Las Vegas」を経営するトニー入谷さん。会社名の「JABA」は、“JAPAN AMERICA BUSINESS ASSISTANT”の略で、「日本とアメリカを結びつけるビジネスなら何でもやるつもりで」名付けたそうです 。
トニーさんは千葉県出身。高校卒業後の進路を模索しているとき、ロサンゼルスに住んでいた父に「アメリカに来たらどうだ?」と声を掛けられ、“とりあえず”ロサンゼルスへ。アメリカのことも英語も全くわからなかったものの、アメリカで頑張ってみようと心を決め、大学入学の準備と永住権取得を目標に日本レストランで6年間働いたのち、24歳の時に永住権を取得。これを機に会社を円満退社し、ちょっとしたご縁から日系のツアー会社でアルバイトのガイドとして働き始めることになったそうです。
「あなたが担当で本当に良かった」を聞きたくて。
「日本からロサンゼルスに来るお客さまをご案内する仕事だったのですが、当時は円高でパッケージ旅行全盛期、昼夜なく働きました。大変でしたが楽しかったですね。それに歩合制だったので働いただけお金もいただけるしやりがいもありました」。この仕事を早く覚えたい、と大学入学を1年遅らせる決意をし、お客様からの「あなたが担当で本当に良かった」の声を励みにがむしゃらに働いたそうです。
「日本が恋しかったのもあって、日本人のお客様と一緒にいるとまるで日本にいるような感覚になれました。アメリカにお越しになる日本人の皆さんに、現地の素敵な所を堪能してもらって喜んでもらうことにものすごく喜びを感じていましたし、おかげで大学入学も結局延期したままになりました(笑)」。
「アメリカで生きていく」と決めた、ふたつの契機
1998年にラスベガス支店へ異動し、ラスベガスの観光ガイドとして働き始めたトニーさんは、この年に「市民権」を取得するという大きな決断を下します。前年に結婚したこともきっかけとなり「本当にアメリカで生きていくと決めた」人生の転機でした。「20代はあまり自分の将来のことを真剣に考えずに過ごしていました。周囲にもアメリカでの生活がうまくいかずに日本へ帰国してしまった人や、ダメだったら帰ればいいという考えの人も少なくなく、そうした人たちに影響されて、自分の中にもそれに似た気持ちがあったように思います。知らず知らずのうちに逃げ道を用意していたのかもしれません。でも、逃げ道を断って覚悟を決めなければどこにいても成功できないと気づき、市民権をとって退路を断ちました」。
長女も生まれ仕事も順調だった2001年、「9.11テロ」で状況は一変します。それまで勤めた会社が倒産。「今自分に何ができるのか、就活が長引くにつれ焦りました。それでも、半年ほどたって次第に観光客が戻り始めたとき、それまでの自分の仕事を評価してくれた業界の人たちから声がかかり始め、2年後には独立し、自分の会社を設立することができました」。
それからは業績も右肩上がりに伸び、すべては順調でした。しかし2020年、今度は「新型コロナ」のパンデミックが襲いかかります。「すべてのお金の責任を追うのが経営者。どうにかして会社を続けていくためには、従業員を解雇せざるを得ませんでした」。苦渋の決断を下したった一人で会社を死守、現在は少しずつ客足も戻り始めているそうです。
「多くの失敗や苦難はありましたが挫折を感じた記憶はないし、人生に一片の後悔もない」と言い切るトニーさん。「もともと根がネガティブで心配性なので、問題が起きたら常に“不幸中の幸い”と考えるようにして“この程度で良かった”と思うようにしているんです」。
ツアーガイドという仕事を通じ、約30年にわたってアメリカと日本の橋渡しをしてきたトニーさんにとって、両国を“つなぐ”この仕事の意義とは?
「今は日本にいながら容易にアメリカを知る事が出来る便利な時代です。それでもやはり実際にアメリカに来て自分の五感全てを使って知識だけでは知りえない空気感や感覚を感じてもらう事で、人生観の肥やしにして欲しいと思いますし、旅行の仕事を通じて日本の方に少しでもその気持ちを分かち合えたらと思っています」。
父の一言で何も知らずに足を踏み入れたアメリカで早や35年。永住権を手助けしてくれた日本レストランとの最初の出会い、人生をかける仕事となったツアー会社との出会い、苦しかった時に手を差し伸べてくれた得意先の人々・・・すべての点がつながって、今がある、とも。「私は最初からアメリカが好きで来たのではなく、来てからこの国が好きになりました。アメリカが好きになったことで、同時に日本の素晴らしさにも気付き、自分が日本人である事をより誇りに思えるようになりました。これからも両国をつなぎ、両方の“いいところ”に囲まれて過ごしていきたいですね」。
最後にこれから新しいキャリアを目指す方へのアドバイスを
「人の上に立ちたいのであれば、人一倍働いて、学んで努力することです。人並じゃダメ。そして全てのものごとに誠実であること。それは日本もアメリカも同じです」。
◆JABA Las Vegas Inc.
Address: 4625 Wynn Rd Suite C-101A Las Vegas, NV 89103
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