News / Blog

- News in USA/Canada, Visa, Blog, and Events -

News / Blog

TSUNAGU:つなぐー日米の架け橋として活躍する人物を探る
Activ8インタビュー・シリーズ

「TSUNAGU(つなぐ)とは“結ぶ”こと。働き手を探す人と仕事を探す人を結ぶ、異文化を結ぶ― かたちは違えど、私たちActiv8はより良き世界の実現のため「架け橋」となり日夜努力している方々に、心からの敬意を表します。Activ8の新しいシリーズ「TSUNAGU」は、ビジネス、教育、芸術、文化などを通じて日本とアメリカをつなぐ、インスピレーションあふれる人々を特集します。

Masa Sasaki:セラミックアーティスト

今回の「つなぐ人」は、アトランタを拠点に活躍するセラミックアーティスト(陶芸家)のMasa Sasakiさん。その独特な色遣いやデザインの作品が名だたる美術館ショップやギャラリーに並び、近年はインスタグラム(@masasasakiceramics)を通じて世界中から注文が増えて制作が追い付かないほど多忙を極めるというMasaさんの、「流れるようにつながれていく」ライフストーリーです。

高校生で出会ったアメリカ

Masaさんとアメリカの出会いは、高校時代。アイダホ州ビュール(Buhl)の高校へ1年間交換留学生として短期留学したのがきっかけでした。80年代後半当時人口わずか3500人ほどの異国の町での生活は、まさに衝撃と困惑と驚きの連続だったそうです。「一緒に留学した4人のうち2人は耐えきれずにすぐに帰ってしまいましたが、僕は自分の気質に合っていると感じてすっかりアメリカが気に入ってしまいました。アメリカの学校は日本と違って個性を大切にしてくれる、そこに僕は励まされたんです」。なんとか住み続けたいと自分で方法を調べあげ、高校卒業後アイダホの短大に入学。Masaさんのアイダホ生活”第2章”が始まりました。

アメリカでの生活と家族の支え

アメリカにとどまる決意をした息子を、両親は快く送り出したそうです。「“かわいい子には旅をさせよ”という考えの両親でしたから。それに僕の父はカントリーミュージシャンだったので、アメリカを身近に感じていたのかもしれません」。Masaさんの父親は「ハンク佐々木」の名前で活躍したプロのカントリーシンガー。「父は僕がアメリカに留学したことに触発されて『それじゃぁ僕も本場で夢を叶える』といってナッシュビルに来ちゃったんですよね(笑)」。

カントリーの聖地に乗り込んで第2の人生を始めた父の近くにいようと、Masaさんは車で約1時間の距離にあるケンタッキー州のウェスタン・ケンターッキー大学へ進み、そこで本格的にグラフィックデザインを学び始めます。

“陶芸家”としてのキャリアのきっかけ

「たまたま履修した陶芸のクラスが面白くて、これまでは2次元だった絵の世界が、3次元のキャンバスに拡がった、そんな感覚にすっかりはまってしまいました。でも専攻はあくまでもグラフィックデザインでしたから、陶芸の道に進むことは考えたこともありませんでした」。

地元とつながったアートフェスト体験

その後、アトランタに移住。別の仕事で生計を立てていたものの、やはりアートのない日常は空しく、地元の陶芸教室に通って再び陶芸に熱中し始めます。趣味で作りためた作品を地元のアートフェストなどに出店して販売を始めたところ、じわじわとファンが拡がり、地元ギャラリーの目に留まることになりました。

「ギャラリーに置いてもらってからはかなり売れましたね。それを見た『ケンタッキー美術館(KMAC)』のショップをはじめ、アトランタの州営美術館『Highミュージアム』、各地のギャラリーから次々と声がかかって作品を置いてもらえるようになったんです」と、こともなげに話すMasaさん。地元の小さなアートフェストで売り始めた作品が大きな人の輪でつながり、営業するまでもなく販路が広がっていき、この頃には、陶芸一本で暮らしていけるようになっていました。

制作で大切にしているのは「ストーリー」

色彩鮮やかでポップなMasaさんのデザインの軸にあるのは、グラフィックデザイン専攻で培われた知識。「自分の制作過程で一番時間がかかるのは“絵付け”で、この作業は焼き物に着物を着せてあげるようなもの。それもただ絵を描くのではなく、その中にストーリー性をもたせることが大切だと思っています」。

[Photo] 宇宙人をモチーフにした人気のマグカップ。色鮮やかな宇宙人(エイリアン)と、カップの底には“宇宙人に捕らわれた人”をイメージした人型が描かれています。「朝コーヒーを飲んだら誰かを救える、というコンセプトなんですよ。デザインには遊び心が大切でしょ」

【写真】宇宙人をモチーフにした人気のマグカップ。色鮮やかな宇宙人(エイリアン)と、カップの底には“宇宙人に捕らわれた人”をイメージした人型が描かれています。「朝コーヒーを飲んだら誰かを救える、というコンセプトなんですよ。デザインには遊び心が大切でしょ」

 

陶芸を通じてつながった縁

Masaさんが作品を通して最初につながったのは、地元の人たちでした。「アートフェストでお客さんと言葉を交わしながら作品のフィードバックをもらえる、そんな“つながっている感”がうれしいですよね」。アートフェストで気に入ってもらった縁で、地元の高級レストランのお皿を制作したり、植木ショップの植木鉢を作ったりと、地元の人たちとのコラボも楽しい、とMasaさんは言います。さらに、陶芸のワークショップやギャラリーのイベントで陶芸専攻の大学生とセッションを行うなど、陶芸の魅力を伝えているそうです。

挫折経験とこれからの目標

「実は僕、これといった挫折経験はないんですよ。昔からあまり落ち込まない性質なんです。ただ、アメリカに来た当初は言葉の壁にぶち当たって、もっと英語を勉強しておけばよかったと後悔しました。でも英語ができないぶん、絵を描いたりピアノを弾いたりすることで“英雄視”されました(笑)。その時々に友達や助けてくれる人がそばにいたから、自分の居場所が見つけられた気がします」

「これからは、彫刻系やオブジェ制作も手掛けていきたいですね。それから、日本とももっと作品を通してつながっていきたいと思っています。あとは裏庭に新たにスタジオを作ることかな(笑)」。

これから新しいキャリアを目指している方へのアドバイス

「あまりくよくよ考えないこと。好きなことがあるなら諦めずに続けて、いつかチャンスが来るのを待って確実にモノにすること。『どうせ無理』などと周りからいろいろ言われても信じ込まないようにすること。僕自身、それでどうにかなってきているから(笑)」

18歳の自分が下した決断が奇しくも父の夢の実現につながり、その父の生きざまが、陶芸で生きていこうという決意の後押ししてくれた、とMasaさんは振り返ります。

「大事なのは“ワクワクすること”です。僕にとって陶芸は、仕事というよりワクワクすること。だからやめられないんです」。

Masa Sasakiオフィシャルサイト
www.masasasakiceramics.com

 

Go Top