TSUNAGU:つなぐー日米の架け橋として活躍する人物を探る
Activ8インタビュー・シリーズ
「TSUNAGU(つなぐ)とは“結ぶ”こと。働き手を探す人と仕事を探す人を結ぶ、異文化を結ぶ― かたちは違えど、私たちActiv8はより良き世界の実現のため「架け橋」となり日夜努力している方々に、心からの敬意を表します。Activ8の新しいシリーズ「TSUNAGU」は、ビジネス、教育、芸術、文化などを通じて日本と北米をつなぐ、インスピレーションあふれる人々を特集します。
第10回 大橋美代子 (Miyoko Ohashi)氏:Matchmaker 「glow biz inc.」代表
今回の「つなぐ人」は、サンフランシスコでMatchmaker(結婚斡旋業)を営む大橋さん。18歳で渡米、さまざまな人生経験を“肥し”に20年以上アメリカで生き抜いてきた半生で、彼女がいきついた境地は「なんとかなるや」の精神。それを支えたのは周りの人たちとのつながりでした。
出会いは横浜。舞台はアメリカ。
大橋さんとアメリカとの最初の邂逅は、故郷横浜。幼い頃、実家近くにあったミリタリーベースに住んでいたアメリカ人家族と交流があった為「豊かなアメリカ」を垣間み、憧れを抱いたのが始まりでした。17歳のとき駐在のアメリカ人と恋に落ち、翌年には長年夢見ていた語学留学のためにアメリカ西海岸へ。
「親とは1年間の約束で留学しましたが、翌年彼との結婚を決め、何も決めずにそのままアメリカで住むことになったんです。子どもの勢いですね(笑)」。その後は現地の旅行会社で働いていましたが、長年のコンピューター仕事で手首を痛め離職。その頃プライベートでも離婚を経験し、彼女ははじめてこれからの進むべき道を模索します。
「自分は本当は何をやりたかったんだろう、と。いろいろ考えた末に浮かんだのが、大好きだったスキューバダイビングでした」スキューバを好きなだけやれるところに行こう、と彼女が向かった先はオーストラリア。
「スキューバ天国」で命の洗濯
「当時、オーストラリアのワーキングホリデーは25歳までだったので、3か月の観光ビザでの滞在でした。帰りのチケット代を入れて所持金は3000ドル。そこで『日本人観光客のケアや通訳をする代わりに、宿と食事をください』とスキューバボートをひとつひとつ回って交渉しました。今から思えばホント無謀ですよね」と懐かしそうに笑う大橋さん。
思う存分大好きな海を見ながら心の洗濯をしたり、スイスでハイキングガイドをしたり、紆余曲折の末、32歳のときようやくアメリカに戻る決意をした彼女に、それからの人生を決める大きな出会いが待っていました。
「人と人とをつなぐ仕事」は最高に面白い。
「その頃たまたま機内誌で、日系の国際結婚斡旋会社の社員募集広告を見て、面白そうだなと思っていました。アメリカに戻ったタイミングでちょうどその会社がサンフランシスコ支店のスタッフを募集していたので応募したら採用されて。それがこの仕事との出会いでした」。
長くカスタマーサービスに携わっていた経験に加え、持ち前の明るく社交的な性格も手伝って仕事は順調。2度目の結婚と出産も経験しプライベートも充実し、復職の準備をしていた矢先に彼女を待ち構えていたのは、会社の倒産という現実でした。
「大好きな仕事だっただけにショックでしたが、当時の同僚がマッチメイキングの新会社を立ち上げ、そこに呼ばれてまた一緒に働くことになりました。その後、代表が日本に帰国したあとを受ける形で2015年に私が代表になりました」。
人が好きだから、人に寄り添うこの仕事が好き。
マッチメイカーの仕事で一番大切なのは「とことんお客さまに寄り添って話を聞くこと」であり、マッチングアプリなどとの大きな違いはそこにあると大橋さんは言います。
「ご本人が気付いていない面を客観的にアドバイスしつつお相手をご紹介したり、お相手からの感想(フィードバック)を伝えることが、マッチメイカーである私の役割です。ネットサービスだと自分目線で相手を選んでしまいがちですが、第三者目線で選ぶと意外とうまくいくことって多いんですよ。お勧めした方とご結婚が決まった会員様から“自分で普通に探していたらこの人とは絶対会っていなかったし、魅力に気付かなかった”と言われた時には、ほら、ね!ってうれしくなるんです(笑)」と、この仕事のやりがいを話す大橋さんのこぼれるような笑顔に、まさに「天職」の二文字が浮かびます。
マッチメイカーは、究極の文化のマッチメイカー。
大橋さんのサービスに登録している会員のバックグラウンドは多様性に富んでおり、アメリカ国内だけでなく日本から登録している人もいるそう。そのため、カップルをつなぎ合わせるプロセスでは“文化の違い”によるミスコミュニケーションもあり、お客さまへの細かなフィードバックは特に重要だといいます。
「たとえば、日本人女性は相手に好意を抱いてもぐいぐいいかずに遠慮がち。ですから、お相手のアメリカ人男性からすると自分に好意をもっていないのでは、誤解して引いてしまうことがあるんですね。両方の文化を知る私がそのプロセスに入ることで“傾向と対策”をたてさせていただくんです」。
これからの夢は「オーロラを見ること」と・・
仕事もプライベートも順調な大橋さんがこれからやってみたいことは、「若い人たちを対象にした、気軽な恋愛相談サービスを立ち上げたい!以前、10代の女の子の相談に乗ってあげたら、私のアドバイスでとてもうまくいったと感謝されたことがあって。親や友達には恥ずかしくて話せないことなども、何でも話せる場所を作ってあげられればいいな、と」。
周りにいつもいい人がいてくれたことが、人生の誇り。
自らチャンスを作り出し、大海原を泳ぐように人生を歩んでいる大橋さん。彼女の人生の支えは、周りの人々の存在でした。
「私の人生の節目節目にはいつもいい人がいてくれたんです。オーストラリアで『仕事をするからベッドと食事をください』と頼んだ私に手を差し伸べてくれた人もそうでした。古くからの友人に誘われて会社の立ち上げにかかわったこともあったし、今の仕事もそう。その人たちのおかげで、一見無謀な私の人生、なんとかなっちゃってる(笑)。“なんとかなるや”と思わせてくれた出会いこそが、一番の宝ですね」。
新しいキャリアを目指す人へのメッセージ
「人を大切にしてください。自分も人からのサポートなしでは何もできなかったとつくづく思います。それから、仕事でがんばりすぎないこと。仕事だけの生活をしていた人がある日突然、コロナや震災などでひとりになり「自分は何をやっていたんだろう」と気づくんです。私のところにはそんな「頑張りすぎちゃった」人がたくさん来るんですよ。休みの日には友達と出かける、外で人と会う、そんなふうに仕事とプライベートのバランスをきちんととることが大事です」。
◆大橋美代子さんプロフィール
ウェブサイト:www.glowjp.com